2022/5/30


「誰かに見られている気がして不安でたまらない」
このように人の視線を極度に恐れる症状を視線恐怖症といいます。


ここまで極端ではないとしても、やっぱり多くの場合、他人の目というのは気になるものではないでしょうか。

たとえば、こんな場面。

  • 服にシミがついてる!
  • 服装が派手かも…
  • 眉毛がうまく描けてない!
  • 私だけ笑い声が大きかった…
  • 最近、おなかが出てきた…

友だちにこっそり打ち明けると、
「誰もそんなにあなたのことを気にしてないよー」と言われる。

自分でもそうかもなぁと思う。
でも、やっぱり気になる。

あなたにもそんなご経験はないでしょうか?

この自意識過剰な心理は、いったい何なのでしょうか。
この記事では、この心理状態の正体、そして、克服法をお伝えします。

執筆者:高島 昌彦
日本実践コミュニケーション心理学協会理事

航空自衛隊等の心理カウンセラーとして活躍する心の専門家。その卓越した技術と知識をもとに、心理学やコミュニケーションの講座も展開。

スポットライト効果とは?

美容室に行ってカットしてもらったら、おかしな髪型にされてしまった。
翌日、暗い気分で出社。
案の定、顔を合わせるみんなの笑顔が引きつっている…

と思っていたが、そもそも周りの人は、髪を切ったことすら気づいていなかった…。

このように、『自分が気にしていることは、他者も同じくらい気にしている』と判断してしまうことを、スポットライト効果といいます。

自分の外見や行動が、他者から過剰に注目されていると思い込んでしまう心理。
いわゆる、自意識過剰な心理状態のことですね。

認知バイアスの一種、自己中心性バイアスといわれるもので、多かれ少なかれ、誰もが持っているものです。


実際、米国コーネル大学の社会心理学者トーマス・ギロビッチ(Thomas Gilovich)らの実験によると、本人が予想している半分も、他者はその人に注目していないことが実証されています。

【参考文献】

Gilovich, T., Medvec,V. H., & Savitsky, K. (2000). Journal of Personality and Social Psychology, 78, 211-222.

自意識過剰な赤ちゃんはいない


先ほど、スポットライト効果は誰もが持っているといいました。
実は、より正確にいうと、人は成長するにつれて、スポットライト効果を身につけていくのです。

どういうことでしょうか?

わかりやすくするために、ちょっと想像してみてください。
赤ちゃんが誕生してくる場面を。

お母さんのおなかから、この世に出てくる赤ちゃん。
周りには、お医者さんや助産師さん、看護師さんなどがいます。
お父さんや、他の家族がいる場合もあるでしょう。

いずれにしても、赤ちゃんからすると、全員が他者。
もちろん、初対面です。

さて、赤ちゃんはどんな思いになるでしょうか。

「みんな、私を見てる!!」
「えっ!? ちょっと待ってよ。こっちは裸なのに…」
「あ~あ、『あいつ泣きわめいていたよ』って噂になっちゃうんだろうなぁ…」

とは、もちろんなりませんよね。
 


赤ちゃんは、どれだけ注目されても(そして、気のせいではなく本当に注目されているのですが)、他者に注目されていることなど、気にしません。

当たり前ですよね。
そして、この当たり前が意味していること。

それは、『私たちは、スポットライト効果を持たずにこの世に誕生した』ということ。
そもそも、私たちは誰もが、最初は他者の目などまったく気にしていないのです。

もちろん、あなたも例外ではありません。
現に誕生してくるときに、周りの視線など気になりませんでしたね?

なのにそれが、成長するにしたがい、他者の目を気にするようになる。

つまり、私たちは、わざわざ「他者に注目されている」という意識を学習し、そして身につけていったのです。

不思議ですよね。
いったいどうして、そんな意識をわざわざ身につけたのでしょうか?
 

スポットライト効果のメリット


私たちが、わざわざスポットライト効果を学習した理由。
それは、スポットライト効果を身につけることにメリットがあるからです。

では、そのメリットとは何でしょうか。
わかりやすくするために、他者が誰もいない状況を考えてみましょう。

 

スポットライト効果がなかったら?


あなた以外、誰もいない空間を想像します。

部屋で一人きりでいる場面でもよいです。
あるいは、無人島で一人きりで暮らしているあなたでもよいですよ。

さて、誰もいない空間で、あなたはどのように着飾り、どのように振る舞うでしょうか。

  • お化粧や服装などの見た目
  • 言葉遣い
  • やせ我慢
  • 遠慮
  • 気遣い

etc.

誰もいないのに、これらのことに意識を向ける人は…いませんよね?

「バカじゃないの?」
こう思い切り誰かを罵ったとしても、反論されません。

ちょっと汚い話ですが、鼻をほじったって、おならをしたって、白い目で見られることもないのです。
誰もいないのですから。

スポットライト効果が一切ない状態のあなたの心理状態。
想像できましたね。
 


では、そのスポットライト効果が一切ない状態のあなたで、人と関わるとしたらどうなるでしょうか?

パジャマ姿で、学校や職場に行くあなたを想像してみましょう。
寝ぐせがついたままの髪型かもしれませんね。

振る舞いだって気にしません。
シーンとした環境で、大きなあくびもしてしまいます。

空気を読むということもしませんから、思ったことも何でも口にしてしまうでしょう。
相手が傷つくことも、平気で言ってしまうかもしれませんね。

「あなた、全然能力ないね」と。
たとえそれが、上司であっても。

 

自分を大切に扱ってもらう注意書き


いかがでしょうか?
スポットライト効果がないと、他者とうまく関わることはできませんね。
きっと、つまはじきにされてしまうでしょう。

ですから、そうならないためには、他者からどう思われるかというのが重要になります。
他者からどう見られるかに意識を配り、他者から非難や軽蔑を受けないように、自身の外見や行動を律していく。

もう、おわかりですね。
そうです、スポットライト効果は私たちを守ってくれているのです。

いうなれば、スポットライト効果は、私たちが他者から尊重され、大切に扱ってもらうための自分自身への注意書きなのです。
 

スポットライト効果のデメリット


このように、私たちが他者から受け入れてもらえるように大切な役割を果たしているのが、スポットライト効果。

では、スポットライト効果のデメリットは何でしょうか?

それは、もうすでに、あなたがよくご存知のことでしょう。
そうです、自意識過剰になってしまうことです。

大勢の前でのスピーチやプレゼンが苦手な人は少なくありません。
前日から、喉がカラカラになってしまうほどの緊張を味わう人もいることでしょう。
 


人前で話すわけではなくても、

  • 人と会うだけでもあがってしまう
  • 人からどう見られているのか気になって仕方がない
  • 自分の容姿や癖が気になる

という方もいることでしょう。

これらは、スポットライト効果が過剰に学習されてしまっているといえます。
つまり、他者の注目を気にするということを、必要以上に身につけてしまっているのです。

それではいったい、どうして過剰に学習されてしまったのでしょうか?
 

どうして自意識過剰になったのか?


産まれたばかりの赤ちゃんには、スポットライト効果がないことはもう説明しましたね。

それでは私たちは、いつ、どのようにして、スポットライト効果を学習してきたのでしょうか?

実はそれは、子ども時代にさかのぼります。

  • 「あー、パンツ見えてる!」
  • 「鼻から牛乳出てる。汚ーい!」
  • 「〇〇ちゃんに悪口言って泣かせた! いけないんだー!!」

自分の見た目や振る舞いに、突然、友だちから非難や軽蔑を受ける。
あなたにも、そんな経験があったはずです。
覚えていませんか?
 


そもそも、そのときのあなたは、自分の見た目や言動が他者から攻撃を受けると予想できていません。
これは、大事なポイント。

なぜなら、不意を突かれることになるからです。
悪気もないのに突然攻撃され、心身ともに大きなショックを受けたことでしょう。

しかも、子どもは容赦ありません(相手もスポットライト効果が未成熟だから)。
あなたが傷つくことなどお構いなしに、全力で攻撃してきます。
いきなり村八分にされることもあったでしょう。

なんと強烈な体験でしょう。
怒り、悲しみ、恥、疎外感・・・とても強い感情が起きたことでしょう。

そして、心理学的にいって、感情が大きければ大きいほど、学習効果が高まります。
つまり、よくも悪くも1回で定着する。

「自分を隠さないと恥ずかしい思いをするんだ!」
「周りの人に変な人って思われていないかな? 大丈夫かな?」
「油断していると、またいつ周りの人から攻撃されるかわからない!!」
 

強烈な体験だけに、たった1回の出来事でも学習が成立してしまう。
このようにして、私たちは、スポットライト効果を過剰に身につけてきたのです。
 

自意識過剰な私を克服するには?


スポットライト効果を過剰に学習したことで、自意識過剰になっている。
ですから、言い換えると、スポットライト効果を適正なレベルに再学習することができれば、人目を気にし過ぎることがなくなるわけです。

では、スポットライト効果を適正なレベルに再学習するためには、どうすればよいのでしょうか。
 

思考レベル


先ほど述べた通り、スポットライト効果のほとんどは、子ども時代に学習したものです。
ですから、大人になった現在、思考レベルの再学習は比較的容易です。

「そこまで見られていないよな」
「そこまで気にされていないだろう」
という思考。
いわゆる、頭ではわかっているという状態。

このレベルまでは、もうすでに到達している。
そういう方もいることでしょう。

「自分は自意識過剰になっている」と気づくのが、再学習のスタートです。


 

感情レベル


思考の次は感情です。
頭で理解した上で、今度は、子ども時代に味わった強烈な感情を上書きできるような、感情体験が必要になるのです。

ここで、心理学的な意味での”学習”の定着を式に表すと、

学習の定着 = インパクト(感情)の大きさ × 回数

となります。

つまり、

  • 感情が大きく動く体験を何度かする
  • 感情はそれほど動かなくても、ともかく、何度も何度も体験する

こうすることで、学習が定着するのです。
 

ですから、
「自分は大丈夫だ」
「自分は相手から受け入れられている」

人との関わりの中で、このような安心感を何度も味わうことで、スポットライト効果が適正なレベルに再学習されていくのです。

もちろん、得られる安心感が大きければ大きいほど、再学習が促進されるのは言うまでもありません。

それでは、どのように実践していけばよいのでしょうか。

 

実践レベル

①客観視


人の目が気になるなど、あなたの自意識が過剰にはたらく場面、その場面を思い出します。

その場面で、不安や恥ずかしさを感じている視点。
その視点が、私の視点です。(1人称の視点

次に、そもそもあなたが自意識過剰になっているのは、相手からあなたを見たときに、あなたの見た目や振る舞いがおかしなものに見えているわけです。
これが、相手の視点です。(2人称の視点

スポットライト効果が生じているということは、この二つの視点があなたの中に、もうすでにあるということです。


そして、ここからが新たな試み。
イメージを使って、第三者の視点を作るのです。(3人称の視点

具体的には、先ほどの、自意識が過剰にはたらく場面。
その場面に身を置くあなた自身から距離を置き、あなたと相手(複数いるなら複数)を外から眺めてみます。


まるであなたに何も関係のない第三者が、たまたまその場面を目撃している映像です。
そして、その客観的な視点で、自分自身を見てみるのです。

すると、どうでしょうか?

「そこまで気にすることないよ」
心からそう思えたら、客観視がうまくできている証拠です。
 

②知らない人の輪に入る


「自分をそこまで不安に思うことはない」
心からそう感じるには、「自分は人から受け入れられている」という安心感を味わう必要があります。

ですので、少し勇気を出して、人の輪に入ってみましょう。
それも、自分を受け入れてくれるかどうか定かではない、知らない人の輪に。

なぜ、よく知らない人と関わるのがよいのでしょうか。
それは、よく知らない相手だからこそ、「自分は他者から受け入れられているのだ!」という感情が強く起きるからです。

趣味のサークルや習い事、講座や自己啓発セミナーなどであれば、関わる必要感も自然と生まれるので好都合です。

いつもと違う環境に自分の身を置くことで、意外と何とかなる逞しい自分を発見できることでしょう。
 

<関連ページ>実践コミュニケーション2級認定講座
 


 

まとめ


私たちがどのように他者と関わり、自己を律するようになったか。
また、人目が気になり過ぎてしまうのはなぜか。

スポットライト効果の解説、そして、その克服法についてお伝えしてきました。

生まれつきと思っているご自身の癖や性格も、その多くは学習して身につけたものです。
ですから、変えることができる。

一度しかない人生です。
歩かされるのではなく、自分の意志で歩く。

後悔のない人生とは、そのように生きることではないでしょうか。
どうぞご自身の心と、丹念に向き合ってみてください。


<関連記事> 人前で緊張する人のための「あがり症克服3段メソッド」

 

執筆者:日本実践コミュニケーション心理学協会理事 高島昌彦

【執筆者】
高島 昌彦

 

高島昌彦のプロフィール
  • 元航空自衛隊嘱託外部カウンセラー
  • 元国立大学附属特別支援学校教諭
  • カウンセリングMaNa 心理カウンセラー
  • JPCPA理事

 

教育学部にて自閉症を中心とする発達障害を専門に学び、大学卒業後は、国公立の特別支援学校教員として14年間勤務。

在職中に人間関係のストレスからうつ病を発症し、退職。

同じように苦しんでいる人の手助けをすべく、心理カウンセラーとして独立。
それと共に、自らうつ病を克服した際に用いた心理学、コミュニケーション学を応用し、独自の「必ず役に立つ、体感できる講座」を体系化する。

また、カウンセリング技術研修では、自らの経験から「苦しんでいる人が本当に必要としていること」を第一に、人の心の仕組みの深い理解、プロとしてあるべき意識の持ち方、そして必要不可欠な技術が網羅された、熱い中にも人間味のある講座を展開。
その人柄と他に例を見ない内容から、日本各地で絶大な人気を誇る。
 

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