" /> カウンセラーが教える「心を柔軟にするトレーニング」|心理学への旅④

心理学への旅④
心を柔軟にするトレーニング

JPCPA代表理事
丹下坂 愛実
 

2021/9/5


ヨガ、ピラティス、ウォーキング、ランニング、体のメンテナンスには色々な方法がありますね。
自分の好みや生活形態に合わせ、取り組んでいらっしゃる方も多いのではないでしょうか。

運動不足を感じ、「なんかしなきゃ!」、「体、動かさないと!」、と思いつつも、やれていない、という人も多いことでしょう。

一方で、心の柔軟にするトレーニングはどうでしょうか?

日々トレーニングを積んでいます、という人は、専門家でもない限り、まずいないというのが実態のように思います。

必要に迫られ、どうしても解決しなければならないという段階になって初めて、自分でネットや本で勉強したり、あるいは、専門家の元を訪れる、というのが一般的のように感じます。

さて、今日の心理学の旅は、「心を柔軟にするトレーニング」をお伝えしていきます。
読み終わる頃には、真夏にどっぷりと汗をかいて、シャワーを浴びた後のような、スッキリとした感覚を味わえるのではないかと思います。

さぁ、旅へと出かけましょうか。

心がこる状態とは?

 

想像してみてください。
筋肉がこった時、体はどのような状態になっているでしょうか?

  • 1日中ずっとパソコンに向かったあと
  • 1日中立ちっぱなしだった日の夜
  • 普段しないスポーツをした次の日の朝


1日中パソコンに向かったあとだと、肩回りがガチガチに。
1日中立ちっぱなしだった日の夜は、ふくらはぎがパンパンに。
普段しないスポーツをした次の日の朝は、全身がむち打ちのような状態に。

といったように、動かさなかった(動かした)部位が、時間が長ければ長いほど、硬く固まった状態になっていると思います。

いわゆる、体が柔軟さを欠いた状態、「こっている」という状態になりますね。

この「こっている」状態、精神的には快、不快、どちらの気持ちになることが多いでしょうか。
圧倒的に、不快と感じる人の方が多いと思います。
ですので、大きな伸びをしたり、ストレッチしてみたり、あるいは、マッサージを受けに行ってみたり。

何かしら、その不快な状態を、少しでも解消しようと意識的、無意識的に努力するわけです。

肉体的にも、パフォーマンスが下がるのではないでしょうか。
1日中パソコンをしたあとでは、疲れ果て、仕事効率は下がるでしょうし、立ちっぱなしのあとも然りです。

「あ~、疲れた。」
そのままベッドに倒れこむ、お風呂に入る、プシュ~っと一杯。
完全に仕事オフモードに突入です。

 

実は、「心がこる」状態は、体がこる状態と同じことが起きます。
ガチガチに固まってしまい、にっちもさっちもいかなくなる。

心に余裕がない、なんていう言葉もよく耳にしますね。

この「心がこる」、心に余裕がない時、私たちは一体、どのような状態にあるのでしょうか?

今まで誰しも、何かしらの心配事、あるいは、問題の壁にぶち当たったことがあると思います。
それらが大きければ大きいほど、心は、どのような状態でしたか?
ちょっと思い出してみてください。

四六時中、そのことばかり考えていませんでしたか?
文字通り、寝ても覚めても、です。
他に何も手につかない、仕方ないから仕事をする、家事をする。
もうこんな人生・・・
極限まで追い詰められた経験がある人も、多いのではないのでしょうか。

この状態が、体の状態と同じことが言える、ということなのです。
つまり、その心配事、問題のことしか考えられない、視野狭窄に陥っている、これがまさしく、「心がこる」という状態です。

 
心がこった人

心を柔軟にするトレーニング


2章では、こった心を柔軟にするトレーニング方をお伝えしていきましょう。
トレーニングといっても、その対象は「心」という実態のないものなので、体のほぐし方のようにはいきません。

まずは、大多数の人が実践している方法から見ていきましょう。

 

行動に目がいき、心が置き去りにされている



多くの人が、どうすれば問題が解決するか、試行錯誤しています。
当然と言えば当然ですね。

  • 問題の原因になっている人が改心すればいいのか?
  • では、その人の考え方をどうやって変えれば良いのか?
  • 相手が変わらないのであれば、どうやって自分が変われば良いのか?
  • 怒りを我慢する?
  • 上司に直談判する?
  • 会社に訴える?

挙げれば、その方法にはキリがありません。
しかし、残念ながら、これら全て、うまくはいかないでしょう。

今、これを読んでいるあなたは、すでに色々な方法を試したはずです。
万策尽きた・・・
という人もいるでしょう。

どんなに頭を捻っても、誰かに相談しても、解決しないのです。

原因は、簡単です。
「行動」にだけ着目しているからです。
つまり、その行動に至る「心」は、ずっと置き去りにされてしまっているのです。

 
万策尽きた人

「客観視」 心のこりをほぐすトレーニング


過去に何かしらの問題を抱えていた、あるいは、現在進行形で何かしらの問題を抱えている、どちらのケースでも、「心のこり」をほぐすトレーニングができます。
 

さて、実際にやり方を順を追ってお伝えしていきましょう。

準備するものは、椅子もしくは、ざぶとん2つ。
クッションでも構いません。

片方の椅子(ざぶとん)に座り、今抱えている問題を話します。
思う存分、話してください。

話し終わったら、椅子(ざぶとん)から立ち上がり、もう一つの椅子(ざぶとん)に移動します。

そして、先ほどまで座ってたくさん話していた自分をじっくりと見つめます。

自分を「客観視」します。

今の自分から見て、先ほどの自分は、どのように映っているでしょうか?

楽しそう?
喜んでる?
ハッピー?

違いますね。

辛そう。
悲しそう。
苦しそう。
寂しそう。
怒り狂ってる。

どんな自分が見えますか?

そして、ここがポイントです。
目の前の席に座っているのが、あなたの一番大切にしているひとなら、なんて声を掛けてあげますか?

大丈夫だよ!
十分頑張ってるよ!
無理しないで!
わかるよ、その気持ち。

どんな言葉を掛けてあげますか?

その言葉を掛けたら、もう一度、最初に座っていた椅子(ざぶとん)に戻ります。
そして、先ほど、あなたの一番大切にしている人に掛けた言葉を、自分自身が受け取ります。

大丈夫だよ!
十分頑張ってるよ!
無理しないで!
わかるよ、その気持ち。

 

今、あなたは、どんな気持ちですか?

 
黒と赤二つのイス

まとめ

 

問題や悩みが大きければ大きいほど、他人が助けてあげることはできないと言われています。

多額のお金を肩変わりすることも、その家庭に入り込むことも、職場に代わりにいくことも、私たちは、その問題を抱えている人の代わりになることは不可能ですよね。

唯一できることは、その人の気持ちをわかろうとすること、これが、唯一無二の手段です。
わかってあげることもできないのです。
何故なら、同じ体験をしているわけではないから。
「わかろう」と、共感する気持ちが大切なのです。

私たちは、大きな問題や悩みを抱えれば抱えるほど、その一点にのみ集中して、周りが見えなくなってしまいます。
「心がこる」状態に陥っています。

その凝り固まって動けなくなった心を、違う角度から眺めることによって、ほぐしていってあげます。

これが、心を柔軟にするためのトレーニング方法です。

私たち心理カウンセラーが、カウンセリング中に実際に行っている手法でもあります。

 

あなたの心が少しでも暖かくなっていたら幸いです。

また次回、心理学の旅でお会いしましょう。

 


執筆者:日本実践コミュニケーション心理学協会 代表理事 丹下坂愛実

【執筆者】
丹下坂 愛実

 

  • 公認心理師
  • 北海道公立学校スクールカウンセラー
  • カウンセリングMaNa 代表
  • JPCPA代表理事

 

心理職唯一の国家資格『公認心理師』。
児童心理学士。
大学では、社会心理学、人格心理学、犯罪心理学等、幅広く心理学を学ぶ。

卒業後、公立の小学校の勤務を経て、2006年、「カウンセリングMaNa」設立。
17年間で接したクライアントは9,000人を超える。
発達障害、不登校、職場・家庭・恋愛・人生の悩みと、クライアントが抱える問題は多岐に渡る。

そのクライエントが抱える生の悩みを詳細に分類、分析、体系化して作り上げたコミュニケーションを主体とした各種講座は、男女、年齢問わず、幅広い層の支持を得る。

受講者一人ひとりの想いに寄り添いつつ、会場全体を一つにまとめていくその手腕、そしてその温かさは、受講者の心に深く沁み込んでいく。

 

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