NLPについて調べると、“コミュニケーション技術”のような紹介を目にすることが多いのではないでしょうか?
実は私たちの中にも、そして私たちが関わってきた人たちの中にも、コミュニケーション技術を学びたくてNLPを始めたケースが多くあります。
実情としては人間関係に悩みがあって、それを上手くいかせるためにコミュニケーション技術を求めた形です。
「自分の人間関係が上手くいかないのはコミュニケーション技術が足りないからだ」という発想でした。
そしてNLPのセミナーを受講してみます。
確かにセミナーの中には、いくつかのコミュニケーション技術が含まれています。
などが代表的です。
他にも、効果的な目標設定のポイントや、
物の見方を広げる方法(リフレーミング)など、
コミュニケーションに応用できる内容も含まれます。
ですが、これらがコミュニケーションに役立つからといって、NLPそのものがコミュニケーション技術かと言えば、そうではありません。
NLPそのものは、心の仕組みをプログラムとして調べて、心の中を変えられるようにする方法論です。
ただしコミュニケーションと密接な関係にあります。
そこが勘違いされやすいポイントかもしれません。
ということでNLPとコミュニケーションの関連性を説明してみます。
「NLPの位置づけ」のところで説明したように、NLPが心を扱うときには、その手段としてコミュニケーションを利用します。
心理学のようにアンケートや統計を利用したり、医学や脳科学のように装置や計測器を使って調べたりはしません。
NLPが心を調べるときは、その対象者とコミュニケーションをする形をとります。
他人を対象とするときには会話をしながら質問を投げかけ、自分を対象とするときは内省しながら質問を自分に投げかけます。
そういう意味で、コミュニケーションを通して心を扱うのがNLPの特徴です。
コミュニケーションを『手段』としているのであって、NLPの『目的』は別のところにあります。
コミュニケーション技術とNLPとを『目的』の観点から区別してみましょう。
コミュニケーション技術の目的は『人間関係において成果を出す』ことです。
など。
さまざまな成果を目標としてコミュニケーションのやり方を工夫します。
コミュニケーション技術の流派によって、こうした目標とする成果が異なって想定されていることに注目してください。
コーチングとか、セールスとか、社交術とか、ブレインストーミングとか。
流派が異なれば目標が異なり、それぞれで使うテクニックや理念も異なります。
一方、あらゆるコミュニケーション技術に共通することに注目すると、それは「相手との関係性において成果を出す」ところだと言えます。
目指す成果が出せなかったら、技術としては「上手くいかなかった」と解釈されます。
成果が出せるほど「技術が高い」と評価されます。
実際の人間関係において自分の望む変化が起きるかどうかを成果と捉えて、その成果を出すために使われる方法がコミュニケーション技術だということです。
その点、NLPの目的は『人間関係において成果を出す』ところではありません。
NLPの目的は『やり方のモデリング』です。
それによって最終的に『自由になる』ことを目指します。
NLPをやった結果として人間関係に成果が出る可能性はありますが、それは期待される効果の1つであって、そこを目的としているわけではないのです。
NLPが目指すのは『モデリング』。
モデリングについては別項目で詳しく説明しますが、簡単にいうと「上手くいくやり方を型として取り出す」ことです。
上手くいかなくて困っている人は、上手くやり方をプログラムとして持っていないだけ、と考えます。
だから上手くいくプログラムを取り入れられれば、少なくとも上手くいく方向に変えられる。
上手くいくプログラムを自然に身につけられる幸運な経験がなかった人でも、その過去が生み出した制約から自由になれます。
そこがNLPの目的です。
ですからNLPがモデリングしている「上手くいくやり方」は、とても広範囲です。
コミュニケーション技術のように、人間関係での成果だけを目的とはしていません。
恐怖症やPTSDへの対処法も含まれます。
クリエイティブに考える方法、達成しやすい目標のイメージの仕方、感情の癖を修正する方法、自信を高めるやり方、衝動的な行動を消し去る方法、ネガティブな考えを打ち消す方法、悪習慣を改善する方法…、などと幅広い応用例があります。
逆に、先に説明したとおり、コミュニケーション技術もモデリングしています。
心理療法の達人がやっていたコミュニケーションを分析して、その関わり方の型を抽出しました。
これらはNLPをコミュニケーション分野に応用したケースと説明するのが適切でしょう。
NLPの目的は「人間関係で成果を出す」ことではありません。
「上手くいくやり方をモデリングする」のがNLPの目的です。
あくまで、そのモデリングの結果の一部に「コミュニケーション技術“も”含まれる」という話です。
NLPは歴史として、心理療法家の研究から出発しています。
詳しい歴史の話は別項目を参照してもらうとして、簡単にポイントを述べておきます。
この経緯によっても、NLPがコミュニケーション技術であるかのような印象が出ているかもしれません。
NLP誕生のキッカケは、NLPの共同創始者の一人、リチャード・バンドラーがゲシュタルト療法を研究するところにあります。
ゲシュタルト療法の祖、フリッツ・パールズのやり方を研究して、自らゲシュタルト療法の研究会のようなものを主催します。
このときの監修が、もう一人のNLP共同創始者、ジョン・グリンダーです。
その後、家族療法の母と称されるヴァージニア・サティアのやり方も研究するようになります。
そして2人の心理療法家のコミュニケーション方法を体系的に整理して、新しい心理療法の形を提唱します。
そこには言語学者であるジョン・グリンダーからの分析も含まれました。
このときに開発されたのは心理療法ですから、一種のコミュニケーション技術だったといえます。
その後、精神科医のミルトン・エリクソンの心理療法も研究するようになりました。
ミルトン・エリクソンの治療は独特で、催眠を含め、後世の様々な技法に影響を与えています。
リチャードとジョンの2人は、ミルトン・エリクソンのコミュニケーションスタイルも研究して、モデリングの作業を進めました。
こうして今度は、3人の心理療法家のコミュニケーション技術を体系化して発表します。
この時点ではまだNLPという名称がついていませんでしたが、NLPの原点にあたる新しい心理療法が脚光を浴びるようになります。
これ以降、共同創始者の2人と、その研究グループにいたメンバー(共同開発者)たちは、モデリングの対象範囲を広げていくことになります。
そして現在のように、人の心に関する全てがNLPの研究範囲となっていくのです。
NLPがまだNLPと呼ばれていなかった頃は、確かに心理療法というコミュニケーション技術の一種だったかもしれません。
しかしNLPが発展してNLPと呼ばれる頃には、コミュニケーション技術に限定されないものになったという話です。
そうは言いながらも、NLPが心理療法から出発しているところは、今も方法論としての特徴に色濃く反映されています。
例えば当初にモデリングされた心理療法家たちの言語パターンは、現在のNLPのテクニックにおいて、メタモデル、ミルトンモデルとして残っています。
NLPが心のプログラムを変えるテクニックとしてモデリングした方法の中にも、3人の心理療法家たちのやり方を参考にしたものが多く含まれます。
このように、NLPがモデリングによって使ってきたテクニックには、心理療法というコミュニケーション技術を踏まえたものが多いのです。
そのためテクニックだけに注目すると、心理療法のような対人支援のコミュニケーション技術のような印象が出やすいようです。
結果としてNLPを学んだ人たちの中にも、
「NLPを使う」=「NLPのテクニックで他者の悩みを解決する」
と捉えているケースが見受けられます。
ですが、それはNLPに含まれているモデリングの産物の一部でしかありません。
NLPそのものはコミュニケーション技術ではないのです。
心理療法家たちのコミュニケーション技術のモデリングを起源として、その影響を受けた『心のプログラムの扱い方』がNLPに残っている、と説明するのが適切でしょう。
繰り返しになりますが、コミュニケーション技術であれば、人間関係に成果を出すことが目的となります。
自分の求める結果が得られるように技術を使うわけです。
その点、NLPの目的は別物ということでした。
『心のプログラムを変える』ためにモデリングをするのがNLPです。
上手くいかないパターンを生み出しているプログラムを調べて(特徴を見つける=モデリング)、そのプログラムを変えます。
ですから、本人が「上手くいかない」と思っていることを変える取り組みこそが、NLPの実践の中心となります。
簡単にいえば「悩みや問題、目標を扱う」ということです。
その範囲は人生全般に及びますが、実際のところ、人生の大部分には人間関係がつきものでしょう。
自分の上手くいかないことを改善しようとすると、人間関係にまつわる心のプログラムに取り組むケースが多くなるものです。
厄介な人間関係に遭遇することは日常につきもののはずです。
ほぼ全ての人が、そうしたストレスを抱えながら毎日を過ごしています。
なかば諦めながら…。
NLPを実践するときには、こういった「上手くいかない」ときを題材として選びます。
そして、関わっている心のプログラムを変える取り組みをします(セミナーではペアになって実習をする)。
結果として、プログラムが変わります。
心の癖が変わるのです。
苦手意識や、手に負えない感情、衝動的な言動や、不毛な応酬などが起きなくなります。
これらは心の癖として自動的に反応してしまっているだけのこと。
その自動反応を生むプログラムを変えれば、問題そのものが消えてなくなるわけです。
厄介な関係に巻き込まれにくくなるのです。
そして人間関係が改善されます。
コミュニケーションの技術を使って人間関係に成果を出すのではなく、
成果を出にくくしている心の癖のプログラムを変えるから成果に繋がる、という仕組みです。
人間関係の成果を求めてコミュニケーション技術を学ぼうと考える人は多いようですが、心の癖を変える方針も1つの選択肢として覚えておいてください。
『技術』と『能力』は別物です。
技術、テクニック、手法は「やり方」の話。
その「やり方」に長けているかどうかは『技能(スキル)』と呼ぶのが一般的でしょう(技術+能力=技能)。
そして「やり方」は無関係に、とにかく「結果」が出せるのが『能力』です。
コミュニケーション技術を学ぶ場合、特定の流派のやり方を知るところから始めます。
そして、そのやり方がスムーズにできるように練習します。
そうやって技能を高めて、結果が出やすくしていく流れです。
先にも説明したとおり、たしかにNLPにもコミュニケーション技術は含まれます。
他の流派の技術を一切知らない時点であれば、NLPの中の技術でも実用的に思えるかもしれません。
しかし正直なところ、それだけでは物足りないと私たちは考えています。
私たちはカウンセリングや心理援助を中心としてコミュニケーション技術のトレーニングを提供していますが、扱う技術の精度や量、求める技能レベルは、そちらのほうが高度だと感じます。
それはNLPのレベルが低いのではなく、ただ専門性の違いから生まれるものです。
カウンセリングや心理援助は「クライアントの悩みについての援助」という目的が定まっているからこそ、特化した専門技術が多く求められます。
一方、NLPに含まれるコミュニケーション技術は、NLPの万能性や応用範囲の広さが想定されるため、あまり専門的に特化したものとはなっていません。
数多くのテクニックを紹介する都合もあって、技術を練習する時間も長くないのが一般的です。
汎用的で身につきやすくするためにシンプルにまとまっていますから、誰にでも役立つとはいえますが、高度な専門技術を求める人には物足りないのも仕方ないところです。
例えば、質問の言語パターンは、セールスでも、カウンセリングでも、教育でも、家族関係でも役立つ原則的な内容です。
しかし、例えばセールスの技術を上げたい人にとっては、一般的過ぎて使いにくいかもしれません。
達人セールスマンが教えてくれる営業セミナーのほうが、成果に直結する専門技術を学べる可能性があります。
実際のところ、NLPのセミナーを受講した後、「もっと高度な技術を身につけたいから」と別のセミナーを受ける人は少なくありません。
コーチングやカウンセリングなど、本人の興味にあった技術に特化していく流れが見受けられます。
では、コミュニケーション技術を求めてNLPを学ぶのは賢明ではないのでしょうか?
コミュニケーション『技術』そのものが目的なら、NLPのセミナーがベストではないかもしれません。
ですが、もっと広い意味で「コミュニケーションを向上させたい」のだとしたら、NLPも1つの候補にはなるはずです。
それはNLPのセミナーを通じて「コミュニケーション能力が上がる」からです。
技術の種類を増やすわけでもなく、技能を高めるわけでもない。
でもコミュニケーションにおける結果が出やすくなるのです。
不思議でしょうか?
コース中では、専門的なコミュニケーション技術を数多く紹介することもなく、またその習熟度を上げるためのトレーニング時間も少ないのに、どうして『コミュニケーション能力』が上がるのでしょうか?
それは実習の全てにコミュニケーションが含まれるからです。
全ての実習がトレーニングになります。
コミュニケーションの基礎力を上げる練習機会が多いのです。
喩えるなら、料理教室に通うようなものです。
料理教室では、調理師専門学校で習うような高度な技術を学ばないはずです。
ストイックな鍋振りや、包丁技能のトレーニングもしないでしょう。
よくある家庭料理のレシピを一通り作ってみるのが一般的なはずです。
しかしその過程で自然と、包丁の使い方、味つけの加減、火入れの時間、食材を扱うときの力加減、調味料の性質などを体験的にトレーニングすることになります。
レシピに沿って作業するだけで、料理の要素を一通り体験することになっているわけです。
NLPのセミナーも同様です。
実習がコミュニケーションによって行われますから、さまざまな基礎の要素をトレーニングすることになるのです。
具体的には…
などです。
こうすることで観察力や共感力、質問力、理解力、言語化能力、内省力などの基礎力が養われます。
さらに人間関係そのものへのポジティブな印象を高めていくことができます。
また、NLPならではの特徴である「心の仕組みをプログラムとして捉える」ところも、コミュニケーション能力に役立ちます。
相手の気持ちや真意が見えてくるばかりか、なぜ相手がそんな言動をするのかも理解できたり、相手の心の動きに納得できたりもします。
相手の心が分かるほど、自分の対応で工夫できるところが増えるのは言うまでもありません。
さらに自分の心の癖が解消されて、感情的に安定してコミュニケーションできるようになれば、それだけでも落ち着いて効果的な対応をしやすくもなります。
このように、
ことの組み合わせとして、NLPのセミナーを受講するだけで、かなりのコミュニケーション能力の向上が期待できるのです。
【札幌】 1.11(土) 満席
【函館】 2. 9(日)
【東京】 2.16(日)
【札幌】 4.13(日)
【東京】 4.19(土)
【大阪】 6. 1(日)
【札幌】 1. 12(日)・13(月)満席【札幌】 6. 14(土)・15(日)
【東京】 7. 5(土)・ 6(日)
【大阪】 9. 20(土)・21(日)
【札幌】 2025年 3~6月
【東京】 2025年11~2月
【札幌】 1.11(土) 満席
【函館】 2. 9(日)
【東京】 2.16(日)
【札幌】 4.13(日)
【東京】 4.19(土)
【大阪】 6. 1(日)
【Zoom】12月~ 2月 満席
【Zoom】 4月~ 6月
【札幌】2025年11月・4月
【東京】2025年3月8・9日
【東京】2025年5・6月
【札幌】 8.23(土)
【函館】12. 6(土)